東洋大学の残業代未払い問題 ─「住宅手当」の落とし穴、あなたの会社は大丈夫ですか?

東洋大学の残業代未払い問題 ─「住宅手当」の落とし穴、あなたの会社は大丈夫ですか?

東洋大学が残業代の未払いで是正勧告を受けたニュースが話題になっています。厳しい声もありますが、実はこの問題、多くの会社が同じミスをしている可能性があります。今回は「住宅手当」と残業代計算の関係を、わかりやすく解説します。

今回のニュース概要

東洋大学が教職員の残業代を算定する際「住宅手当」を残業代を計算する際の基礎賃金から除外していたとして、王子労働基準監督署から是正勧告を受けました。未払いは20年以上にわたり、年間の未払い額は1800万円程度に上るとされています。

1. 東洋大学だけの問題か?

ネットのコメントでは厳しい声も見られます。しかし、今回のニュースをよく読むと、問題の本質は少し違います。

東洋大学は「適法だと事実誤認していた」と説明しています。つまり、悪意を持って未払いにしていたのではなく、住宅手当のルールを誤って解釈していたということです。そしてこれは、東洋大学だけの話ではないと思っています。

2. そもそも「住宅手当」は残業代から除外できるのか?

労働基準法第37条では、残業代を計算するための「基礎賃金」から除外できる手当を7つ定めています。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

確かに「住宅手当」は除外できます。ただし、どんな住宅手当でも除外できるわけではない——ここが落とし穴です。

3. 除外できる住宅手当・できない住宅手当

「住宅手当」という名前さえついていれば除外できると思っていませんか?実はそうではありません。除外できるのは、住宅にかかる費用の額に応じて算定される手当のみです。

除外できる(OK)の例

  • 家賃の一定割合を支給(例:家賃の20%を支給)
  • 家賃の金額帯に応じて段階的に支給(例:家賃5〜10万円→2万円、10万円超→3万円)
  • 住宅ローン額の一定割合を支給

除外できない(NG)の例

  • 住宅の形態ごとに一律定額(例:賃貸2万円、持ち家1万円)
  • 扶養家族の有無で金額を変える(例:家族あり2万円、独身1万円)
  • 全員に一律の定額を支給(例:全員一律1万円)

ポイントは「実際の住居費に連動しているかどうか」です。費用と手当額が比例・段階的に連動していれば除外OK。そうでなければ、たとえ「住宅手当」と名乗っていても残業代の計算に含めなければなりません。

4. 中小企業ほど要注意

「賃貸の人には2万円、持ち家の人には1万円」という払い方をしている会社は多いのではないでしょうか?これは住宅の形態ごとの一律定額なので、除外できません。残業代の計算に含める必要があります。

同様に、「独身は1万円、家族がいれば2万円」という払い方も除外できません。これは住宅費ではなく家族構成に応じた支給だからです。

このルールは1999年(平成11年)から適用されていますが、いまだに誤った運用をしている会社は少なくないと感じています。特に社労士や弁護士に確認する機会が少ない中小企業では、かなりの確率で同じ誤りが起きているのではないでしょうか。

まとめ・私見

東洋大学をそこまで叩けないというのが正直な感想です。「適法と思っていた」という言葉は言い訳にも聞こえますが、同じ誤りを抱えている組織は決して少なくない。今回の報道をきっかけに、東洋大学も含めて、自社の住宅手当のルールを見直す企業が増えることを期待します。