「うちの店長は管理監督者だから、残業代は払わなくていい」
そう思っている会社、意外と多いんじゃないでしょうか。特に飲食業や小売業では、店長職のスタッフを「管理監督者」として扱い、残業代を支払っていないケースをよく耳にします。
でも、最近の裁判例を見ると、会社側が勝てるケースはそう多くないんです。「うちは大丈夫」と思っていたら、実は大きなリスクを抱えていた——そんな話、決して他人事ではありません。
「管理監督者」って、そもそも何?
労働基準法では、管理監督者には残業代(時間外割増賃金)を支払わなくてよいと定められています。ただし、ここで言う「管理監督者」は、法律上の厳格な定義があります。
簡単に言うと、経営者と一体的な立場で仕事をしていることが求められます。具体的には、
- 労働時間・休日などの規制を超えて活動せざるを得ない立場にあること
- 重要な職務と権限を持っていること
- その地位にふさわしい待遇を受けていること
この3つが揃って、はじめて管理監督者と認められるんですね。肩書きが「店長」「マネージャー」でも、実態が伴っていなければ管理監督者とは認められません。
「それに見合った報酬」って、具体的にいくら?
先日、ある弁護士さんのセミナーに参加する機会がありました。管理監督者として認められるには「それに見合った報酬」が必要というのは知っていたんですが、具体的にいくらが基準になるのか? は、正直なところ全然わかっていませんでした。
それを聞くことができました。もちろん会社のある地域によって差はあるものの、おおよその目安はこうでした。当然ですが、この要件だけで判断されませんが、年収要件をある程度クリアしたからといって、絶対に勝てるわけではありません。
✅ 年収600万円 → ほぼ負け
✅ 年収700万円 → ギリギリ戦えるライン
✅ 年収800万円 → それでも苦しいケースあり
これ、なかなか衝撃的じゃないですか?
地方の中小企業であれば、部長クラスでも年収600〜700万円というケースは珍しくありません。その水準では、裁判になった場合にほぼ勝ち目がない、ということになってしまうんです。
「社内で一番年収が高い」だけでは足りない
さらに、もう一つ見落としがちな落とし穴があります。
固定給ベースで比べたとき、その管理監督者が社内でトップの年収だったとしても——残業代を含めた他の社員の総収入と比べたときに負けてしまうと、それも問題になるんです。
たとえば、店長の年収が650万円でも、残業が多いスタッフの年収(残業代込み)が680万円になっていたりすると、「管理監督者としての待遇」とは言えなくなってしまう。
つまり、残業代を受け取っている一般社員の総支給額と比べても、上回っていることが必要ということ。これはかなりハードルが高いですよね。
だったら、取締役にしてしまった方が早い?
結論として、管理監督者として認められるには、取締役と同等レベルの処遇が必要になってくるケースが多いようです。
それだけの待遇を用意するなら、いっそのこと取締役にしてしまった方が話が早いんじゃないか?というのが、正直な感想です。
もちろん、取締役には別のリスクや責任も伴いますので、一概には言えません。ただ、「管理監督者扱いで残業代をカットする」という運用は、思っている以上にリスクが高いということは、ぜひ知っておいていただきたいんです。
「うちの会社は大丈夫かな?」と少しでも気になった経営者・人事担当の方、一度、現状の運用を見直してみることをおすすめします。早めの対策が、後々の大きなトラブルを防ぐことにつながりますよ。
