近年、運送業界でもメンタルヘルス不調による休職相談が増えています。ドライバーという仕事は、長時間の単独作業、不規則な生活リズム、荷主対応のプレッシャーなど、精神的な負荷がかかりやすい要素が揃っています。
休職制度自体はどの会社にもあると思います。ただ、実際に精神疾患のケースに直面すると、「あれ、この規定だとうまく機能しない」という場面が意外と多いのです。今回は、私が現場でよく相談を受ける3つのポイントについてお伝えします。
1. 休職スタート要件に「連続日数」を入れていないか
厚生労働省のモデル就業規則には、休職の要件として次のような規定があります。
「業務外の傷病による欠勤が〇か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」
通常のケガや病気であれば、これで特に問題は起きません。ところが精神疾患の場合、「3日出勤して2日休む」といったパターンを繰り返すことが多く、連続した欠勤がなかなか発生しません。
結果として、いつまで経っても休職の要件に達せず、本人は不安定な状態のまま乗務を続け、会社も労務管理上のリスクを抱え続けることになります。休職制度を「使える制度」にするためには、連続日数を要件にせず、休業日数に関係なく休職指示を出せるようにするなど、規定の作り方そのものを見直す必要があります。
2. 診断書代、誰が負担するか決まっているか
休職・復職の場面では診断書の提出がつきものですが、この費用負担が就業規則に明記されていない会社は少なくありません。
本人が最初に提出する診断書(休職に入る際の診断書など)は、本人負担とするケースが一般的で、これ自体は特に問題になりません。
ただし精神疾患の場合、本人のかかりつけ医の診断書だけでは、会社側が「本当に復職できる状態なのか」を判断しきれないことがあります。そこで会社が指定した医師の受診・診断書を求めたいケースが出てきますが、この費用まで本人負担としてしまうと、「会社の指示で受診したのに、なぜ自分が払うのか」というトラブルに発展しかねません。
- 本人が最初に提出する診断書 → 本人負担
- 会社が指定した医師の受診・診断書 → 会社負担
この線引きを就業規則や休職に関する覚書にあらかじめ明記しておくことで、「言った言わない」ではなく規定に基づいた対応が可能になります。
3. 復職後に再休職した場合、休職期間はリセットされないか
精神疾患は再発しやすいという特性があります。たとえば休職期間6か月の権利がある社員が、4か月休職して復職。その後1か月ほど勤務し、また体調を崩して休職に入りたいと申し出てきたらどうなるでしょうか。
就業規則に何も定めがなければ、原則として「また新たに6か月の権利が発生する」という扱いになります。これでは、復職と休職を繰り返すたびに休職期間がリセットされ、極端な話、何年でも休職を繰り返せることになってしまいます。本人にとっても本当の意味での療養にならず、会社にとっても人員計画が立てられません。
対策はシンプルです。就業規則に「復職後、一定期間内に再度休職する場合は、休職期間を通算する(リセットしない)」旨を明記しておくこと。先ほどの例で言えば、6か月の権利者が4か月休職して復職した場合、再発時に使えるのは残りの2か月のみ、という設計です。
まとめ
精神疾患対策としての休職制度整備は、大きな枠組みを作るだけでは不十分です。今回挙げた「休職スタート要件」「診断書代の負担」「休職期間の通算」のように、細部の規定こそが実際の運用場面で効いてきます。
規定がないまま運用してしまうと、いざという時に会社側が対応に苦慮するだけでなく、本人にとっても不利益になりかねません。この機会に、自社の就業規則を一度見直してみてはいかがでしょうか。
