「売上が上がれば上がるほど、歩合率もどんどん上がっていく」。こう聞くと、ドライバーのやる気を引き出す良い制度に思えるかもしれません。
実はこの「累進歩合給」という賃金制度、タクシー業界では長年「廃止すべき」と行政から指導され続けている制度なのです。
今回は、この累進歩合給がなぜ問題視されているのか、そしてトラック運送業界にとっても他人事ではない理由を、私の考えも交えてお伝えしたいと思います。
目次
タクシー業界ではなぜ禁止されているのか
累進歩合給とは、売上が一定額を超えるごとに歩合率が段階的にアップしていく賃金制度のことです。厚生労働省は古くからこの制度を問題視しており、「廃止するように」という通達を繰り返し出してきました。
理由はシンプルです。「あと少し稼げば歩合率がグンと有利になる」という状況に置かれると、ドライバーはどうしても無理をしてしまいます。長時間労働、休憩を削っての営業、スピードの出し過ぎ……。頑張りに報いるはずの制度が、頑張りすぎを後押しする制度になってしまうのです。結果として、長時間労働や交通事故のリスクが高まってしまう。これが行政の一貫した問題意識です。
運送業界にも合わないと考える2つの理由
ここからは私見ですが、この累進歩合給の考え方は、タクシー業界だけでなくトラック運送業界にも当てはまる話だと感じています。私が「合わない」と考える理由は、大きく2つあります。
① 無理して走りたがるドライバーが増え、働き方改革・2024年問題に逆行する
累進歩合的な発想を取り入れると、ドライバーは「もう一本走れば歩率が上がる」という状況に置かれやすくなります。改善基準告示や時間外労働の上限規制が強化されている今、こうした「稼ぐために無理をする」動機を賃金制度自体が作り出してしまうのは、会社が進めようとしている働き方改革と真っ向から矛盾します。せっかく労働時間管理を頑張っても、賃金制度がその努力を打ち消してしまっては意味がありません。
② 配車係との軋轢を生みやすい
累進歩合的な賃金制度のもとでは、ドライバーは当然、より稼げる「売上のいいコース」を走りたがるようになります。すると、単価の低い案件や効率の悪いコースは誰も引き受けたがらなくなり、配車係が割り振りに苦労するようになります。「なぜあの人ばかりいい案件をもらえるのか」という不公平感が現場に蓄積し、ドライバーと配車係の間に軋轢を生む土壌になりかねません。
まとめ
累進歩合給は、タクシー業界で長年「廃止すべき」とされてきた、いわば賃金制度の反面教師のような存在です。無理な運転を誘発し、長時間労働や事故リスクを高めてしまうという問題は、業種を問わず起こり得ます。
トラック運送業界で歩合給制度を設計・見直しする際には、「収入が増えるほど無理な働き方を誘発していないか」「現場の配車バランスを崩していないか」という視点を、ぜひ一度取り入れてみていただきたいと思います。
