運送会社では、歩合給を取り入れている会社が多くあります。給与の一部を走行実績や売上に連動させることで、頑張った分がドライバーに還元される仕組みは、業界では馴染み深いものです。
でも、その一方で「完全歩合給」、つまり固定給部分を持たず、歩合部分だけで賃金を構成する制度を採用している会社となると、あまり多くないのが実情です。
「完全歩合給は違法」という誤解
セミナーなどでこの話をすると、必ずと言っていいほど出てくるのが、「完全歩合給は違法だからですよね?」という質問です。
結論から言うと、完全歩合給は、それだけで即座に違法になるわけではありません。もちろん、最低賃金を下回らないよう「保証給」を設定するなど、満たすべき条件はいくつかあります。しかし、それらの条件をきちんと満たしていれば、完全歩合給という制度自体が違法だと言い切ることはできないのです。
それでも、完全歩合給を選ばない理由
「違法ではありませんよ」とお伝えしても、実際に完全歩合給を導入する会社は、やはり多くありません。これは、なぜなのでしょうか。
理由の1つは、多くの社長には、それぞれ「どうしても残しておきたい手当」があるからではないかと、私は感じています。
たとえば、事故を起こしてほしくないという思いから設ける「無事故手当」。休まず一生懸命働いてくれる社員に報いたいという「皆勤手当」。自分のトラックを大切に乗ってもらいたいという「愛車手当」。こうした手当の1つひとつには、社長それぞれの、ドライバーへの思いや会社としての価値観が込められています。
こうした手当を残していくと、賃金の中に歩合給以外の要素が組み込まれることになり、結果として「完全」歩合給ではなくなってしまいます。つまり、完全歩合給を選ばない理由は、法律上の制約というよりも、社長自身が大切にしたい「こだわり」が背景にあることが多いのです。
誤解しないでいただきたいこと
繰り返しになりますが、完全歩合給が違法だから避けられている、というわけではありません。保証給の設定など、必要な条件を満たせば、制度としては十分に成立します。
大切なのは、それぞれの会社が、どんな手当を残し、何を評価軸として賃金制度を設計するかという点です。完全歩合給にするかどうかは、法律の問題である以上に、経営者としての価値観や、ドライバー一人ひとりとの向き合い方が反映される選択なのだと思います。
