デジタコは「証拠」になる 社長が知らないと危ない2つの落とし穴

デジタコは「証拠」になる 社長が知らないと危ない2つの落とし穴

「うちはデジタコできちんと管理しているから大丈夫」――そう思っている運送会社の社長さん、少し待ってください。

デジタコ(デジタル式運行記録計)は確かに便利なツールです。しかし、使い方を間違えると、退職したドライバーから多額の残業代を請求されたときに、むしろ会社が不利になることがあります。

今回は、運送会社で起きやすい「デジタコにまつわる2つの落とし穴」をお伝えします。

落とし穴① デジタコのデータは裁判でそのまま「証拠」になる

残業代をめぐる裁判やあっせんでは、労働時間の立証が最大のポイントになります。このとき、裁判所はデジタコのデータを労働時間の有力な証拠として採用します。

ドライバーが「自分はこれだけ働いた」と主張したとき、弁護士はデジタコの記録を取り寄せます。エンジンのオン・オフ、走行時間、停車時間――これらがすべて時系列で残っているからです。

実際の事案では、ドライバー側が「デジタコの記録を参考に一定期間の労働実態を精査し、それをもとに他の期間も推認する」という手法で残業代を計算し、認められたケースがあります。数ヶ月分のデータをサンプルとして解析するだけで、数年分の未払い残業代を算定できてしまうのです。

社長が「そんなに残業していたつもりはない」と感じていても、記録が残っている以上、それが現実になります。デジタコは会社の味方にも、敵にもなります。

落とし穴② 「運転時間=労働時間」ではない

もうひとつ、よくある誤解があります。それは「デジタコで運転時間を管理していれば、労働時間を管理できている」という思い込みです。

ドライバーの労働時間は、運転している時間だけではありません。たとえば次のような時間も、すべて「労働時間」に含まれます。

  • 荷積み・荷降ろしの作業時間
  • 荷主先での荷待ち時間
  • 出庫前の点呼・車両点検の時間
  • 帰庫後の日報記入・洗車などの時間

デジタコはエンジンが動いている「運転時間」を記録するものです。運転以外の作業時間は記録されません。そのため、「デジタコの記録=労働時間」として管理していると、実際の労働時間との間に大きなズレが生じます。

退職したドライバーが「実際はもっと働いていた」と主張したとき、デジタコの記録だけでは反論できません。それどころか、デジタコに記録されていない時間の分まで残業代を請求されるリスクがあります。

では、どうすればいいのか

まず、労働時間の記録はデジタコだけで完結しないことを認識することが大切です。運転時間以外の作業時間も含めて記録できる仕組みを整えましょう。

具体的には、乗務員日報に出社・帰社時刻、荷待ち時間、作業時間を記載させ、それを定期的に確認する習慣をつけることが基本です。デジタコのデータと日報の記録を照合することで、実態に即した労働時間管理ができるようになります。

また、デジタコのデータは「ドライバーに不利な証拠」としてだけでなく、「会社が正しく管理していた証拠」にもなり得ます。記録をきちんと保管し、労働時間管理の根拠として活用することが重要です。

まとめ

デジタコは「証拠になる」ことと、「運転時間しか記録できない」ことの両方を理解して使うことが大切です。

退職後に残業代を請求されるトラブルは、運送業界で増え続けています。「うちは大丈夫」と思っていた会社が、数百万円から数千万円の支払いを求められた事例は少なくありません。

労働時間管理の見直しは、リスク回避のためだけでなく、ドライバーが安心して働ける職場づくりにもつながります。「まずは現状の記録方法を確認してみる」ところから始めてみてはいかがでしょうか。