荷主企業への初の取適法勧告事例に学ぶ ― 運送委託取引適正化のポイント

荷主企業への初の取適法勧告事例に学ぶ ― 運送委託取引適正化のポイント

公正取引委員会が荷主企業に勧告

2026年7月10日、公正取引委員会はミネベアアクセスソリューションズ株式会社(宮崎市、自動車部品・自動二輪車部品等の製造販売業)に対し、下請法から改組された取適法に基づく勧告を行いました。

今回のポイントは、荷主企業として自ら運送を委託していた点に対して勧告が行われたことです。これまでの下請法では想定されにくかった構図であり、今後の物流適正化の流れを象徴する事例といえます。

取適法で新設された「特定運送委託」とは

2026年1月に施行された取適法では、下請法にはなかった「特定運送委託」という類型が新たに設けられました。これは、荷主が製品等の運送を運送事業者に委託する取引そのものを規制対象とする仕組みです。

従来、運送業務は「運送の再委託」として間接的に捉えられる場面が多くありましたが、取適法では荷主と運送会社の取引が直接の規制対象になりました。荷主企業にとっては、運送委託が明確に法令順守の対象であるという認識が不可欠です。

今回認定された違反行為の内容

公正取引委員会が認定した違反行為は、主に次の2点です。

  • 2026年1月から4月までの間、運送委託先の中小受託事業者に生じた荷役作業(積込み・取卸し)および附帯業務、合計546時間26分について、費用を負担することなく行わせていたこと
  • 2024年1月から2026年2月1日までの間、製造委託先36社に対し、金型等846個の保管費用を負担することなく保管させ続けていたこと

いずれも、対価を支払わずに相手方に経済上の負担を負わせる行為として、取適法(および改正前の下請法)における「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に該当すると判断されています。なお、両行為に係る不利益額は、その後全額支払われています。

荷主企業が取るべき対応

今回の事例を踏まえ、荷主企業には次のような対応が求められます。

  • 運送委託が「特定運送委託」として取適法の直接の規制対象になることを、社内で正しく理解する
  • 荷役作業や附帯業務など、運送本体以外に発生する役務についても、あらかじめ対価を明確にし、書面で取り決めておく
  • 金型・治具等を無償で長期間保管させていないか、既存の取引を点検する
  • 役員・発注担当者向けに取適法の研修を実施し、社内体制を整備する

運送会社が取るべき対応

一方で、運送を受託する立場の会社にも、意識しておきたい点があります。

  • 荷役作業や附帯業務など、運送そのもの以外に発生している役務について、荷主企業としっかり協議し、対価を明確にしておくこと
  • 「これくらいは当然」と曖昧にせず、発生した費用や作業時間を記録し、必要に応じて根拠として提示できるようにしておくこと
  • 対価が支払われないまま作業を求められる状態が続いている場合、それが取適法違反に当たり得る行為であることを、運送会社側もしっかりと認識しておくこと

今回のケースでも、公正取引委員会は荷役作業等に費やされた時間を「546時間26分」という単位まで具体的に認定しています。運送会社側が実態を記録し、荷主企業との協議のテーブルに乗せることが、適正な取引関係を築く第一歩になります。

まとめ

今回の勧告は、取適法における「特定運送委託」規定が実際に適用された、注目すべき事例です。荷主企業には、運送委託が直接の規制対象であるという認識のもと、荷役作業や保管など運送以外に生じる役務の対価を明確にする姿勢が求められます。

一方の運送会社にも、発生している役務の対価について荷主企業と協議し、明確にしておくこと、そしてそれを怠る取引が取適法違反に当たり得ることを正しく理解しておくことが重要です。双方が制度を正しく理解し、適正な取引関係を築いていくことが、今後の物流業界全体の健全な発展につながります。