運送業界のM&A・組織再編が増えていますが、車両台数の基準を意識せずにスケジュールを組んでしまうと、思わぬところで準備期間が足りなくなることがあります。今回は、物効法の「保有車両台数150台」という基準と、M&Aのタイミングの関係について整理します。
目次
なぜM&Aの現場でこの話が重要になるのか
物効法では、保有車両台数150台以上の事業者が「特定貨物自動車運送事業者等」として、中長期計画の作成・提出などの法的義務を負います。単体では150台に届いていなかった会社同士が合併すると、合併後の法人としては基準を超えてしまう、というケースが起こり得ます。
M&Aや組織再編は、労務・許認可・税務など、検討すべき論点が多岐にわたります。車両台数の基準は見落とされがちですが、届出や計画提出の準備期間に直結するため、早い段階で意識しておく価値があります。
判定基準は「毎年3月31日時点」の車両台数
特定事業者に該当するかどうかは、毎年度末、つまり3月31日時点の保有車両台数で判定されます。合併によって台数が増えても、その効果が反映されるのは、合併後最初に迎える3月31日時点の数字です。
届出は5月末、計画提出は7月末が基本
判定の基準日である3月31日から、届出の期限は5月末です。約2か月の間に、車両台数の確定と届出の準備を行うことになります。
その後、特定事業者として指定を受けると、中長期計画の提出が必要になります。初回の提出期限は、指定を受けた年度の7月末が基本です。ただし、年度によっては、指定件数の多さから通知に時間がかかることを踏まえて、期限が延長されることもあります。実際、直近の年度では、初回の提出期限が10月末まで延長された例もありました。
合併のタイミングで、準備期間が大きく変わる
このスケジュールを踏まえると、合併を実行する時期によって、実質的な準備期間がかなり変わってきます。
- 4月に合併した場合:その年の3月31日時点ではまだ合併前の状態なので、その年の届出は不要。翌年の3月31日時点で合併後の台数として判定され、そこから5月末の届出に向けて、1年近い準備期間が確保できます。
- 1月や2月に合併した場合:直後の3月31日時点ですでに合併後の台数でカウントされるため、5月末の届出までは、実質2〜3か月しか準備期間がありません。中長期計画の提出まで見据えると、複数の営業所の運行実態を統合し、荷待ち・荷役の実績データを整理する作業も必要になり、この期間はかなりタイトになります。
法人単位の判定なので、グループ再編の設計次第で結果が変わる
もう一つ押さえておきたいのが、判定は法人単位で行われるという点です。同一法人であれば、複数の営業所や合併前の各社の車両台数は合算されますが、別法人として存続させる、あるいは分社化する場合には、それぞれの法人ごとに個別に判定されます。
つまり、同じ規模の会社を統合する場合でも、一つの法人に合併するのか、持株会社の下に複数法人として残すのかによって、特定事業者に該当するかどうかの結果が変わってくる可能性があります。組織再編のスキームを検討する段階で、この点も選択肢の一つとして意識しておくとよいでしょう。
M&Aスケジュールを組む際に、意識しておきたいこと
車両台数が150台に近い、あるいは合併によって基準を超える可能性がある会社は、次の点を早めに確認しておくことをおすすめします。
- 合併実行日を、3月31日を基準にどのタイミングに置くか
- 合併後の法人構成が、車両台数の合算にどう影響するか
- 該当する場合、5月末の届出、7月末(延長時は10月末)の中長期計画提出までのスケジュールを、法務・労務のスケジュールとあわせて確保できているか
M&Aや組織再編のご検討にあたっては、こうした届出関連のスケジュールも含めて、早めにご相談いただくことをおすすめします。
