ニチレイ障害と異常気象が教えてくれたこと
先日、ニチレイグループのシステム障害が大きく報じられました。冷蔵倉庫の入出庫や冷凍食品の出荷が止まり、取引先約5,000社、外食チェーンやスーパーにまで影響が波及したのは、記憶に新しいところです。
思えばここ数年、物流が「止まる」ニュースは珍しくありません。大雪のたびに高速道路で大型車が立ち往生し、国土交通省が繰り返し注意を呼びかけています。台風などの異常気象時には、無理な輸送を強いられたトラックの事故も後を絶たず、国が「輸送の在り方」の通達を出すほどです。
今回のニチレイのケースでは、年間約5,000社が同社の低温物流インフラを利用しているとされ、外食大手のフライドチキンチェーンが全店舗規模で品切れや営業時間短縮の可能性を発表するまでに波及しました。一つの会社が止まっただけで、これほど広い範囲に影響が及ぶという事実は、私たちに強い危機感を突きつけます。
システム障害、大雪、台風―引き金は違っても、共通しているのは「物流が止まれば、社会活動そのものが止まる」という現実です。冷凍食品の欠品、店頭の棚の乱れ、外食チェーンの営業時間短縮。私たちが当たり前に享受してきたものは、物流という見えないインフラの上に成り立っています。
ここで経営者の皆さまに知っていただきたいのは、こうした「事件・事故」がなくても、物流は止まりかねないという事実です。
NX総合研究所の試算によれば、何も対策を講じなければ、2030年度には国内の輸送能力の約34%が不足するとされています。荷物の3つに1つが運べなくなる計算です。しかも地域差があり、東北や四国では約4割に達するという推計もあります。これは事故でもシステム障害でもなく、ドライバー不足という、確実に進行している構造的な課題です。
つまり私たちが向き合うべきは、「もし何か起きたら」というリスクだけでなく、「何もしなければ、平時でも物流が止まる」という現実です。今回のニチレイの件や大雪の立ち往生は、いわば予告編なのかもしれません。
では、物流に関わる事業者は何ができるでしょうか。特別なことではなく、地道な積み重ねだと思います。
- 適正な運賃収受により、担い手が働き続けられる処遇を確保すること
- 荷待ち、荷役時間の削減など、荷主との協力による効率化を進めること
- 改善基準告示の遵守を土台に、無理のない労働環境を整えること
- DXやシステム活用により、限られた人員でも業務を維持できる体制をつくること
どれも一朝一夕には実現しませんが、逆に言えば「今から手を打てば、間に合う課題」でもあります。2026年4月からは改正物流効率化法により、荷主側にも中長期計画の策定などが義務づけられ、荷主と運送事業者が共に対策を講じる流れが強まっています。この機運を、自社の労務管理や運行体制を見直す好機として活かしていただきたいと思います。
物流は止まって初めて、その大きさに気づかれる仕事です。だからこそ、止まる前に、できることから備えていく。今回のニュースが、そのきっかけになれば幸いです。
