「物流業界の2024年問題」という言葉が広まって以来、ドライバーの長時間労働や人手不足について注目が集まってきました。しかし今、その影響は運送会社だけにとどまらず、荷主企業そのものの行動を大きく変え始めています。
かつてはライバルだった企業同士が、物流という領域では「一緒にやろう」と手を結ぶ動きが、食品業界を中心にじわじわと広がっています。この変化は、運送会社の経営にとっても決して他人事ではありません。
なぜ、競合が手を組むのか
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限が設けられました。これがいわゆる「2024年問題」です。ドライバーが働ける時間が制限されることで、これまでと同じ方法では荷物が運べなくなる――そんな危機感が、荷主企業の間でようやく現実のものとして広がり始めています。
そこで注目されているのが「共同配送」です。複数の荷主が車両や輸送ルートを共有することで、積載効率を上げ、トラックの台数を減らし、ドライバーの負担も軽減する――そんな仕組みが、業界の垣根を越えて広がりつつあります。
食品業界で進む「垣根を越えた連携」の実態
共同配送の動きは、特に食品業界で顕著に見られます。具体的な動きをいくつか見てみましょう。
- パン業界:同業メーカー同士が配送を共同化し、輸送効率の向上を図る取り組みが進んでいます。
- チルド食品(ハム・ソーセージ等):温度管理が必要なチルド品でも、同業他社との共同輸送スキームの構築が始まっています。
- 飲料業界:大手飲料メーカーが連携し、納品ルートの集約・効率化を進めています。
- コンビニ大手3社(セブン・ファミマ・ローソン):配送センター間の横持ち輸送や遠隔地店舗への共同配送を実証実験で検証。走行距離を約22〜48%削減できることが確認されています。
- 異業種間の連携:スーパーや異なる業種の企業同士が組む取り組みも広がりを見せています。
食品メーカー5社の出資で設立されたF-LINE株式会社(2019年)のように、物流の共同化を専門に担う会社が誕生するケースも出てきており、業界の構造変化はすでに始まっています。
法律も荷主を動かし始めた
荷主企業の動きを後押ししているのは、危機感だけではありません。2025年4月には改正物効法(流通業務総合効率化法)が施行され、荷主企業にも物流効率化の努力義務が法律で明確に課されることになりました。
つまり、「物流をどう効率化するか」は、もはや荷主企業にとって「やれたらいい話」ではなく、法的な責任を伴うテーマになっているのです。今後、共同配送への移行をはじめとする物流の構造見直しは、さらに加速していく可能性が高いといえます。
運送会社が今すぐ考えるべきこと
荷主業界のこうした動きは、運送会社の経営に直結します。特に注意が必要なのは、特定の荷主に依存している運送会社です。
「うちの荷主さんとは長い付き合いだから大丈夫」と思っていても、その荷主さん自身が物流の仕組みを根本から見直そうとしているかもしれません。共同配送が進めば、これまで自社が担っていた輸送が統合・再編される可能性があります。取引路線の変更、委託先の絞り込み、物量や運行回数の変動――こうした変化が、予告なく起こりえます。
依存度が高い荷主ほど、動向を把握しておくことが重要です。定期的に情報交換の機会をつくり、荷主の物流戦略がどう変わろうとしているのか、早めに把握しておくことが経営リスクの軽減につながります。
まとめ
2024年問題をきっかけに、荷主業界では「ライバル同士でも物流は一緒に」という発想が広がりつつあります。食品業界を中心とした共同配送の動きは、今後さらに業種や地域を超えて拡大していく可能性があります。
運送会社にとって、荷主の動向は「自社の仕事の量と内容」に直結する重要な情報です。日ごろからアンテナを張り、変化の兆しを早めにキャッチしていくことが、これからの時代を生き抜くための経営判断につながります。
