2026年4月13日、日本経済団体連合会(経団連)は、公正取引委員会(公取委)が意見募集中の「物流特殊指定」改正案に対する意見書を提出しました。改正自体を評価しながらも、実務上の解釈が不明確な点について具体的な明確化を求める内容です。本記事では、その意見書の主要なポイントをご紹介します。
目次
物流特殊指定の改正とは
物流特殊指定とは、荷主と物流事業者の取引における優越的地位の濫用を規制するために公取委が独占禁止法に基づいて定めた告示です。今回の改正案では、従来の規制内容の見直しに加え、着荷主(受け取り側の荷主)を新たに規制対象に含めることなども検討されています。経団連は「取引適正化の観点から評価できる」としつつも、文言や解釈が曖昧な箇所が多く、実務に混乱が生じるおそれがあると指摘しています。
意見①:コスト根拠資料の要求は違反にならないことを明確に
改正案では、荷主が物流事業者との価格協議において一方的に代金を決定することを禁じています。これ自体は適切な規制ですが、経団連は「荷主が物流事業者にコスト増加の根拠資料の提出を求めることが、直ちに違反行為に当たるのか?」という点が不明確だと指摘しています。
別紙の運用基準案では、委託側が根拠資料の提出を求めること自体は否定していないとも読めます。経団連は、協議の過程で根拠資料を求める行為は通常の交渉の範囲内であることを、改正案の中で明確に示すよう求めています。
意見②:着荷主の指示で生じた追加作業の帰責関係を整理すべき
また、荷主が物流事業者に運送以外の役務(荷役作業など)を無償で要求することを禁じています。しかし実務では、着荷主(届け先)の指示によって追加作業が発生するケースが頻繁にあります。経団連は以下の点について解釈を示すよう求めています。
・発荷主と着荷主の間の契約に荷役作業が規定されている場合、その作業は「不当な要求」に当たらないことの確認
・物流事業者が発荷主に確認せず独断で対応した場合、「発荷主が行わせた」とはみなされないことの確認
・緊急時(庫内事故など)に着荷主が通常と異なる荷卸場所を指示した場合の扱い
同様の問題は(運送内容の変更・やり直し)にも共通しており、経団連はこちらについても同様の明確化を求めています。
意見③:「荷待ち」を一律に禁止行為とすることへの異論
公取委の研究会資料では「荷待ち」が禁止行為の具体例として挙げられていますが、経団連はこれに強く異論を唱えています。荷待ちは発荷主・着荷主・運送事業者・倉庫事業者など複数の関係者が絡み合う複合的な現象であり、特定の主体の行為だけに起因するものではないというのがその理由です。
また、長時間の荷待ち問題については、改正物流効率化法やトラック物流Gメンによる指導など、すでに別途の対応が進んでいます。2026年度からは発着荷主双方に対する中長期計画の提出義務も予定されており、物流特殊指定で重ねて規制することは制度間の整合性を損なうおそれがあると指摘しています。経団連は、荷待ちのような複合的な事象はこの適用対象から除外することを求めています。
意見④:支払条件(60日ルール)の実務的な解釈を明確に
改正案では、代金の支払いは給付受領日から60日以内を原則とし、超過する場合は「正当な理由」が必要とされています。経団連は、実務上よく用いられる以下のような支払い形態が認められるかどうかについて、明確な解釈を求めています。
- 月締めによる支払い制度の継続
- 請求書受領を起点とした支払期日の設定(例:受領後60日以内)
- 「60日以内」を「2か月以内」として扱うこと(例:X月1日納品→X+1月末日支払)
- 年間契約における年末一括払いの継続
- 親子会社・同一グループ内取引の扱い
これらは多くの企業で日常的に行われている商慣行であり、解釈が不明確なままでは現場の混乱を招きかねません。取適法の運用基準と平仄を合わせた柔軟な運用が認められるかどうか、早期の明確化が望まれます。
おわりに
経団連の意見書は、物流特殊指定の改正という方向性を支持しつつも、現場の実態に即した運用のために「解釈の明確化」を繰り返し求める内容となっています。規制の趣旨がどれほど正当であっても、解釈次第では実務に混乱が生じます。公取委が今後どのような形で改正案を最終化するか、引き続き注目が必要です。
