2024年度(令和6年度)、仕事が原因で精神疾患を発症し、労災と認定された人が1,055人となり、1983年に統計を取り始めて以来、初めて1,000人を超えました。前年度からは172人の増加で、これで6年連続の増加・過去最多更新となっています。
原因の内訳を見ると、最も多いのが上司などからのパワーハラスメントで224件。次いで仕事内容・仕事量の急激な変化が119件、顧客や取引先などからのカスタマーハラスメントが108件、セクシュアルハラスメントが105件と続きます。ハラスメントが精神疾患の大きな要因になっていることが、あらためて浮き彫りになった形です。
なぜ、これほど増えているのか
増加の背景には、認定基準の見直しがあります。2023年度にカスタマーハラスメントが正式に労災の原因項目として追加されたことに加え、パワハラの基準も類型化され、以前より認定されやすくなったという事情があります。また、スマートフォンでの録音など、ハラスメントの実態を証拠として示しやすくなったことも一因と考えられます。
とはいえ、認定基準が緩和されたから増えた、というだけの話ではありません。仕事内容や仕事量の急激な変化、慢性的な人手不足、顧客対応の負担など、働く人を取り巻く環境そのものが、以前より厳しくなっていることは間違いないでしょう。今後も、精神疾患を理由とした労災請求・認定は増え続けていくことが予想されます。
会社にできる備えとは
「うちの会社は大丈夫」と言い切れる会社は、もう少ないのではないでしょうか。今後、精神疾患を抱える社員が増えていくことを前提に、会社として備えておくべきことが3つあります。
1つ目は、休職制度の整備です。休職・復職の基準やルールが曖昧なままだと、いざというときに対応がぶれてしまい、それ自体がトラブルの火種になります。休職期間、給与の取り扱い、復職の判断基準や手続きなどを、あらかじめ就業規則等で明確にしておくことが重要です。
2つ目は、過重労働の防止です。長時間労働や急激な業務量の変化は、精神疾患の主要な原因の一つです。労働時間の管理を徹底し、特定の社員に業務が集中していないか、定期的にチェックする体制が求められます。
3つ目は、ハラスメント防止対策です。社内のパワハラだけでなく、顧客からのカスタマーハラスメントも、今や労災の原因として明確に位置づけられています。ハラスメント研修や相談窓口の設置はもちろん、顧客対応の場面で社員を守るルール作りも、今後ますます重要になってきます。
精神疾患による労災は、決して他人事ではありません。「会社が原因だ」と言われないためにも、今のうちから休職制度・労働時間管理・ハラスメント対策という3つの柱を整えておくことが、会社と社員の双方を守ることにつながります。
