従業員を解雇する場合、会社にとって最も恐ろしいリスクの一つが「バックペイ」です。もし解雇が無効と判断された場合、会社は本来支払うべきだった賃金を一括で支払わなければなりません。今回は、このバックペイのリスクと、その軽減策としての「裏ワザ」についてお伝えします。
バックペイとは何か?
解雇をめぐる労使トラブルが裁判に発展した場合、解決までには1年から2年、場合によってはそれ以上の時間がかかることも珍しくありません。その間、会社は「解雇は有効だった」という前提で業務を続けることになりますが、もし最終的に「解雇無効」の判決が下されると、問題が一気に浮上します。
バックペイとは、解雇が無効とされた場合に会社が支払わなければならない「解雇されなければ本来受け取れたはずの賃金」のことです。裁判期間が2年であれば、2年分の賃金をまとめて支払う必要が生じます。月給30万円の従業員であれば、単純計算で720万円にもなります。これが、解雇リスクの中でも特に経営者を悩ませる「バックペイ問題」です。
懲戒解雇と普通解雇を同時に言い渡す「裏ワザ」
このバックペイのリスクを軽減するための手法として、「懲戒解雇と普通解雇を同時に言い渡す」という方法があります。
懲戒解雇は、会社にとって最も重い懲戒処分です。多くの企業では就業規則に「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」と定めており、また従業員にとっても今後の転職活動に大きなダメージとなります。だからこそ、懲戒解雇は慎重に行う必要がありますし、それが認められるかどうかは裁判所の判断次第です。
ここで活用できる手法が、懲戒解雇と普通解雇を同時に通知することです。裁判所が「懲戒解雇は認められないが、普通解雇としては有効」と判断するケースがあります。この場合、解雇自体は成立しますので、バックペイの請求を回避できる可能性があります。もちろん退職金の支払いは必要になりますが、数年分の賃金をまとめて支払うリスクと比べれば、会社の損失は大幅に抑えられます。
注意点:あくまでも「選択肢の一つ」として
この方法は、必ず認められるわけではありません。「懲戒解雇も普通解雇もどちらも無効」と判断されるリスクもゼロではないため、あくまでも裏ワザ的な位置づけで理解しておく必要があります。
また、解雇を行う際には、そもそも解雇事由が客観的に合理的であること、社会通念上相当であることが大前提です。懲戒解雇・普通解雇の同時通知はあくまでもリスクヘッジの手段であり、「解雇の理由づけ」として安易に使えるものではありません。
解雇を検討する際は、事前に必ず専門家へご相談ください。手続きの順序や記録の残し方、通知の方法一つで、裁判になった際の結果が大きく変わることがあります。
まとめ
解雇に伴うバックペイのリスクは、経営者にとって決して軽視できない問題です。懲戒解雇と普通解雇を同時に言い渡すという手法は、リスクを軽減するための選択肢の一つとして知っておく価値があります。ただし、その判断は個別の事情によって大きく異なりますので、解雇を検討している場合は早めに社会保険労務士や弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
