「逆パワハラ」をご存じですか?

「逆パワハラ」をご存じですか?

先日、あるクリニックの就業規則を作成していたときのことです。就業規則の作成は、経営者の方の本音や悩みを直接聞かせていただける機会でもあり、私にとって久しぶりでもとても楽しい仕事のひとつです。

ハラスメントに関する条項を一緒に確認していたとき、ドクター(経営者)がふとこんなことをおっしゃいました。

「スタッフから自分へのパワハラも、ハラスメントになるんですか?」

よくお話を聞いてみると、2年に1度くらいはそういうスタッフが出てくるとのこと。経営者であるドクター自身が、自院のスタッフから繰り返し問題のある言動を受けていたのです。

実はこれ、「逆パワハラ」と呼ばれる問題です。パワハラというと「上司から部下へ」のイメージが強いですが、「部下から上司へ」という方向でも成立します。

パワハラの3要素とは

パワハラ防止法では、パワー・ハラスメントは次の3つをすべて満たすものとされています。

① 優越的な関係を背景とした言動であること

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること

③ 就業環境を害すること

ここで重要なのが、①の「優越的な関係」という言葉の意味です。多くの方は「役職の上下関係」だけをイメージされますが、法律上はそれだけではありません。「専門知識や経験」もこの「優越的な関係」に含まれます。

つまり、業務を進めるうえで不可欠な知識や経験を持っている人物は、職位に関係なく、周囲に対して「優越的な立場」になり得るのです。

新入社員でも「加害者」になり得る

さらに驚くべきことに、逆パワハラは新入社員でも起こり得ます。たとえば、特別なスキルや専門知識を持って採用された新人が、その知識に乏しい上司に対してハラスメントにあたる言動をとれば、役職が下であっても「加害者」となる可能性があります。

また、複数の部下が結託して集団となった場合、上司のほうが弱い立場に置かれることもあります。集団対個人の関係も「優越的な関係」にあたるとされています。

経営者が被害を受けた場合の現実的な対処法

では、冒頭のドクターのように、経営者がスタッフからハラスメントを受けた場合はどうすればよいのでしょうか。

労働基準監督署への相談は、経営者側の被害という立場では現実的ではありません。現実的な対処法は、就業規則に基づく懲戒処分です。ただし、いざ懲戒処分を行うとなると、法的な判断が求められる場面が出てきます。そのためにも、日頃からハラスメントに関する根拠規定を就業規則にしっかりと整備しておくことが大切です。

社労士事務所にも顧問弁護士が必要な時代

今回のドクターとのやりとりを通じて、改めて感じたことがあります。最近は、かつては想定されなかったような問題が職場で次々と起きています。社労士事務所であっても、顧問弁護士との連携は必須の時代になったと、強く実感しました。

「正論だから何を言ってもいい」は通用しません。「立場が下だから関係ない」も通用しません。パワハラは、どの方向にも起こり得るのです。

就業規則のハラスメント規定、今一度見直してみませんか?