労使トラブルを減らす究極の方法とは?

労使トラブルを減らす究極の方法とは?

労使トラブルに日々頭を悩ませている経営者の方は、本当にたくさんいらっしゃいます。では、「労使トラブルを減らす究極の方法」というものは、果たして存在するのでしょうか?

「究極の方法」と言うと少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、実はないこともないと思っています。それは、「退職時の対応に気を付ける」ということです。たったこれだけのことを意識するだけで、労使トラブルはかなりの割合で減らせると思います。

中途半端な法律テクニックが招く「しっぺ返し」

退職という局面において、中途半端な法律テクニックを使って小銭をケチり、「うまく処理した」と思っていると、思わぬしっぺ返しを食らうことがあります。

先日、あるセミナーで社長さんからこんな質問を受けました。

「退職時に未消化の有給の取得や買取りを請求されても、これまで有給を取ってこなかった社員が悪いのだから突っぱねて良いと社労士に言われたが、本当か?」

裁判にでもなれば、どういう結論が出るかはわかりません。ただ、私の答えはこうです。

「せっかく円満退社をしてくれるというのに、そんなところで中途半端な法律テクニックを駆使して小銭をケチらない方が良いですよ。わざわざトラブルの元を作る必要もないでしょう。その社員が怒って、労基署や弁護士のところに駆け込んだら、ケチった小銭の数倍のお金を取られる可能性もありますよ。」

退職時の対応というのは、その後の「火種」を残すかどうかの分岐点です。その場のコスト感覚だけで判断してしまうと、後からより大きなコストとして返ってくることがあります。

退職勧奨でも「感謝の一言」が結果を変える

やむを得ず退職勧奨を行わなければならない場面も、経営をしていれば当然出てきます。そういった場合でも、話し合いの最初に「これまで会社のために働いてくれたことへの感謝」をきちんと伝えるだけで、その後の展開がまったく違ってきます。

「どうせ辞めさせられるのに、感謝なんて口先だけでしょう」と思われる方もいるかもしれません。しかし、人は感情で動く生き物です。たとえ結果は同じであっても、「感謝された」という気持ちは、相手の行動に大きく影響します。感謝を伝えられた従業員は、労基署や弁護士のところに駆け込む前に、一度立ち止まって考えることができます。逆に、頭ごなしに法律論だけで対応された従業員は、感情的になって行動をエスカレートさせてしまうことも少なくありません。

法律テクニックは「使いどころ」が命

最近は、YouTubeなどで大袈裟な情報を発信する専門家も増えています。そういった情報の中には、労使トラブルの場面で中途半端な法律テクニックを勧めるものも多く見受けられます。

しかし、労使トラブルというのは、今の時代も結局のところ「人間の感情の問題」だと私は考えています。法律テクニックは確かに重要です。使うべき場面では徹底的に駆使して戦うべきです。ただ、使うべきではない場面で中途半端に使ってしまうと、かえって大きなリスクを背負うことになります。

退職時の対応はまさにその典型です。円満に退社してもらえる状況を、法律論で無理にかき回す必要はありません。そこはぐっとこらえて、相手の感情に寄り添った対応をすることが、長い目で見たときに会社を守ることにつながります。

まとめ:「退職時の対応」が会社を守る

労使トラブルを減らすために、まず見直していただきたいのが退職時の対応です。具体的には次の2点です。

  1. 有給の未消化や買取り請求など、退職時の小さな要求に対して、中途半端な法律テクニックで対抗しない。
  2. 退職勧奨の場面では、最初に「これまでの貢献への感謝」を必ず伝える。

労使トラブルは、法律の問題である以前に、人間関係の問題です。感情を大切にした対応が、会社と従業員の双方にとってより良い結果をもたらします。「退職時の対応」という、一見地味に見えることを丁寧に積み重ねることが、労使トラブルを減らす最も確実な方法だと私は考えています。