言うことを聞かないドライバー、どう対応する? 運送会社が知っておくべき実践的アドバイス

言うことを聞かないドライバー、どう対応する? 運送会社が知っておくべき実践的アドバイス

「もう、どうしたらいいのか…」

ある運送会社の経営者から、こんなご相談をいただきました。「運行指示書を無視する、高速道路を勝手に使う、早めに出発する、そして会社への反発ばかり…。もうほとほと困り果てています」と。このような問題を抱えるドライバーへの対応は、決して珍しいことではありません。今回は、一般的な労務管理の観点と、運送業特有の事情の両面から、実践的な対応策をご紹介します。

まず押さえたい! 運行指示書のルール

そもそも、運行指示書とは何でしょうか?運行指示書とは、ドライバーが安全に業務を遂行するために、出発地・経由地・目的地・運行時間などを記載した書類です。特に重要なのが、「2泊3日(48時間)以上の運行には、必ず運行指示書を作成・交付しなければならない」というルールです。これは法令上の義務であり、会社・ドライバー双方が守らなければなりません。このルールを念頭に置いたうえで、問題のあるドライバーへの対応を考えていきましょう。

一般的な対応の基本:証拠を積み重ね、段階的に対処する

まず前提として、運送業であっても、労務管理の基本は他の業種と変わりません。会社の指示を繰り返し無視するドライバーへの対応は、「証拠を地道に積み重ねること」から始まります。

具体的には、運行指示書に従わなかった日時・状況をその都度記録します。口頭での注意も大切ですが、書面での指導・注意を残すことが重要です。そのうえで、「口頭注意 → 書面警告 → けん責 → 減給 → 出勤停止 → 懲戒解雇」という段階的な懲戒処分の検討に入ります。もちろん、就業規則に定めのある内容であることが前提ですし、処分の内容は問題行為の重大性と均衡が取れていなければなりません。

「なんとなく対応してきた」「注意はしているけど記録が残っていない」という状況では、いざというときに会社側の主張が通りにくくなります。日頃からの記録の蓄積が、のちの対応の土台となります。

なぜ早めに出発するのか? ドライバーの事情に寄り添う視点も大切

ここで少し立ち止まって考えてほしいのが、「なぜそのドライバーは勝手に早く出発するのか」という点です。

多くの場合、その背景にあるのは「渋滞を避けたい」という切実な思いです。渋滞に巻き込まれると、納品時間に間に合わない、拘束時間が延びる、疲労が増す…とドライバーにとってはデメリットが大きい。「少しでも早く出れば、スムーズに走れる」という経験則から、つい早出してしまうわけです。

もちろん、だからといって会社の指示を無視していいわけではありません。しかし、頭ごなしに「ルールを守れ!」と言うだけでは、ドライバーの反発を生むだけです。まずはその事情を理解し、「あなたの気持ちはわかる」という姿勢で話し合いの場を持つことが、問題解決の糸口になります。

2024年問題と改善基準告示を踏まえたアドバイスを

ドライバーに寄り添いながら、次のように伝えることが効果的です。

「残業時間や拘束時間がムダに伸びると、あなたに回せる仕事の本数が減ってしまいますよ。」

これは脅しではなく、現実の話です。2024年問題(トラックドライバーの時間外労働の上限規制)や改善基準告示(拘束時間・運転時間・休息期間などの上限ルール)により、ドライバーが働ける時間には明確な上限が設けられています。拘束時間や運転時間のムダな超過が積み重なれば、法令違反になるだけでなく、会社として仕事を割り振れなくなります。歩合給の比重が大きいドライバーにとっては、走れる本数が減ること=収入の減少に直結します。

「会社のルールを守ることが、あなた自身の収入を守ることにもつながる」というメッセージをしっかり伝えることが大切です。

高速代の問題:経営者も「時代に逆行しない」姿勢を

もう一つ、見逃せない問題が「高速道路の利用」です。ドライバーが勝手に高速道路を使う背景には、「少しでも早く届けたい」「渋滞を避けたい」という思いがあります。この点については、単にドライバーを叱るだけでは不十分で、経営者側にも向き合ってほしい課題があります。

高速道路の活用は、ドライバーの残業時間・拘束時間を削減する有効な手段の一つです。時短に直結するだけでなく、ドライバーの疲労軽減にもつながります。問題は、その高速代を誰が負担するかです。

高速代を会社が負担できない・しないという状況が続くと、ドライバーは「じゃあ自分の判断で使う」「でも費用は出したくない」という矛盾した行動に走りやすくなります。経営者の方には、こう申し上げたいと思います。「高速代を荷主さんに交渉して請求できるよう、会社として動くべきです。それをしないのは、時代に逆行しています。」

2024年問題を受け、物流業界全体で働き方改革が求められている今、荷主との交渉を通じて高速代・付帯作業費などを適正に収受することは、経営者として取り組むべき重要な課題です。ドライバーに「ルールを守れ」と求める以上、会社側も環境整備に本気で取り組む姿勢を見せることが信頼関係の基本ではないでしょうか。

まとめ:叱るだけでなく、制度と対話で解決を

問題のあるドライバーへの対応は、「証拠の積み重ねと段階的な懲戒処分」という労務管理の基本を押さえつつ、ドライバーの立場や事情にも目を向けることが大切です。そのうえで、2024年問題・改善基準告示のルールを踏まえた働き方の設計と、高速代など環境整備への経営努力が、問題の根本解決につながります。

「どうしてうちのドライバーは…」とお悩みの経営者の方は、ぜひ一度、ドライバーの視点とルールの両面から状況を整理してみてください。