「休息期間」、その理解で大丈夫ですか?

「休息期間」、その理解で大丈夫ですか?

PAでの仮眠・裁判例・分割休息から読み解くトラック運転者の休息管理

先日、顧問先の運送会社さんから、改善基準告示について「今さらですが」と前置きしつつ、なかなか本質的な質問をいただきました。「宿泊施設のある休憩所で車を離れて仮眠するのと、PAや道の駅で車を止めて眠るのとでは、休息期間と休憩(仮眠)の扱いはどう違うのか」という質問です。

さらに話は、荷物の看守義務をめぐる裁判例や、分割休息の考え方へと広がっていきました。今回はこのやり取りを、3つの論点に整理してお伝えします。

①休息期間と休憩(仮眠)の分かれ目は「場所」ではなく「拘束からの解放」

改善基準告示における休息期間とは、使用者の拘束を受けない期間であり、勤務と次の勤務との間にあって、直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む生活時間としてその処分が労働者の全く自由な判断に委ねられる時間とされています。休憩時間や仮眠時間とは本質的に異なる性格を持つものです。

その上で厚生労働省のQ&Aは、車中泊が休息期間に該当するかどうかは個別の実態に応じて判断するとしつつ、車両内での休息であっても、駐車スペースが確保でき、荷物の看守義務がないなど、運転者が業務から解放される場合には休息期間となる、と明記しています。

つまり分かれ目は「車を離れているかどうか」ではなく、実質的に業務・使用者の拘束から完全に解放されているかどうかという点です。

「宿泊施設のある休憩所で車を離れて仮眠」は分かりやすく休息期間になりますが、「PA・道の駅で車を止めて」というだけで一律に休憩になるわけでも、一律に休息期間になるわけでもありません。その時間中に運転者が業務上の制約・拘束から解放されているかどうかの実態次第、というのが正確な整理です。

実務上は、事業者が「うちは休息期間として扱っている」と主張するだけでなく、駐車場の確保状況や荷物看守義務の有無などの実態を、運行記録等で裏付けられるようにしておく必要があります。これが監督署対応上の重要なポイントになります。

②「荷物を見張っていた」は労働時間?裁判例に学ぶ

①の考え方を、実際の裁判所はどう当てはめているのでしょうか。ここで参考になるのが、「荷物の看守義務があったから休息にならない」と運転者が主張した裁判例です。三村運送事件(東京地裁令和元年5月31日判決)にあたると思われます。

長距離トラックの運転手が、SAの滞在時間についても「荷物を常時監視する義務があった」として労働時間だと主張し、割増賃金等を求めた事案です。裁判所は次のような実態を踏まえ、常時監視の義務があったとは認められないと判断しました。

  • 車内で睡眠や飲酒をしたり、外に出て入浴や食事などをしたりしており、業務から解放されて自由に利用できる状態だった
  • 貨物を監視する規定や具体的指示はなかった
  • 荷物は重量物で、盗難の可能性は低かった

一方で、対照的な判断がされた事案もあります。田口運送事件(横浜地裁相模原支判平成26年4月24日)では、保冷荷物を運送する運転手の配送先での待機時間について、荷積みのため車列に並びながら車を離れることができず、担当者からの指示があれば直ちに移動できるよう待機していなければならなかったことから、労働時間に該当すると判断されました。

このように、「荷物があるから休めない」という主張が通るかどうかは、貨物の重量や盗難リスク、監視に関する具体的な規定・指示の有無といった実態次第です。ケースバイケースの判断基準を知っておくことは、労務管理・労使トラブル予防の両面で重要になります。

③分割休息との関係──中身は普通の休息期間と同じ

最後に整理したいのが、分割休息との関係です。「分割休息は休息である以上、完全な勤務開放状態にならないと休息ではなく休憩(仮眠を含む)になるのでは」という疑問をいただくことがあります。

結論から言うと、分割休息は「休息期間の性質が薄まったもの」ではありません。休息期間そのものを複数回に分けて与える方法であり、中身の要件は通常の休息期間と全く同じです。分割の要件は次の通りです。

  • 1回あたり継続3時間以上
  • 2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上
  • 3分割を超える分割は認められない

つまり、分割された各時間も、①で述べた「使用者の拘束から完全に解放されているか」という基準を満たしていなければ、休息期間ではなく単なる休憩(仮眠含む)扱いになります。「分割だから多少緩くていい」ということはありません。規定の適用範囲を正しく理解しているかどうかで、現場の勘違いはずいぶん防げます。

まとめ

休息期間か休憩(仮眠)かは、場所ではなく「拘束からの解放」の実態で決まります。裁判例が示す通り、荷物の看守義務の有無も含めて実態を客観的な記録で裏付けられるようにしておくこと、そして分割休息であっても中身の要件は変わらないことを押さえておくこと。この2点が、労使トラブルを防ぐ最大のポイントといえるでしょう。