東京と伊豆諸島を結ぶ航路を運航する東海汽船が、船員による酒気帯び乗務やアルコール検査の身代わり受検、舷門を閉めないままの運航といった複数の法令違反を理由に、国土交通省から事業停止処分に向けた行政手続きを受けているというニュースが報じられました。
この航路は伊豆諸島にとって、人と物資を運ぶ唯一に近い手段です。事業停止となれば島の暮らしそのものに大きな影響が及びます。国としても、島民の生活を守ることと、輸送の安全を守ることのあいだで、非常に難しい判断を迫られていることと思います。ただ、報じられている行為の内容そのものは、擁護のしようがありません。
運送業界に携わる方たちも、これを「海運の話」「対岸の火事」として片付けるべきではないと感じています。トラック運送事業でも、構造的には同じことが起こり得るからです。今回は、このニュースから運送会社さんに意識していただきたい3つの教訓をお伝えします。
① 巡回指導を甘く見ない
トラック運送業における「巡回指導」は、実施主体がトラック協会であることもあり、「仲間内のチェックだから」と甘く見てしまいがちです。しかし、この巡回指導をしっかりと準備して臨むことは、そのまま運輸局の監査対策になります。日頃の点呼記録や運行管理の状況を巡回指導のタイミングで一度きちんと棚卸しし、指摘事項には確実に対応しておくことが、いざというときの備えになります。
② 労基署を甘く見ない
運送会社の経営者にとって、もっとも身構える役所は運輸局だと思います。そのぶん、労働基準監督署の監査については、つい後回しにしてしまう会社も少なくありません。しかし、労基署と運輸局は相互通報制度で結びついています。労基署の監査や是正勧告に誠実に対応しないと、その情報が運輸局に伝わり、運輸局監査につながることがあります。「怖いのは運輸局だけ」という認識は、今こそ改める必要があります。
③ 普段からの基本の徹底
運輸局の監査は、事故が起きたときや、今回のように大きくニュースになったときに強化される傾向があります。これに対する備えは、結局のところ普段からの基本の徹底しかありません。改善基準告示をはじめとする関連法令の順守、点呼や健康診断の的確な実施とその記録の保存、日常的な安全運転指導。こうした地道な取り組みを積み重ねていくことこそが、最も確実なリスク対策になります。
おわりに
今回の東海汽船の件は、業種こそ違いますが、輸送に携わる企業として決して他人事ではありません。「うちは大丈夫」と思ったときこそ、一度立ち止まって、巡回指導への向き合い方、労基署対応、そして日々の基本動作を見直していただければと思います。
