2026年7月23日、松山市の水産会社代表が、無許可の白トラック業者に運送を依頼したとして書類送検されました。下関港(山口県)から豊洲市場(東京都)まで、ヒラメを計76万円で輸送させたという容疑です。
各メディアは「4月施行の改正法で、依頼する荷主側も初めて処罰対象になった」と報じています。ただ、この報道には少し補足が必要です。今回は、トラック運送業に関わる方に向けて、今回の摘発が持つ本当の意味と、これから運送会社が取るべきスタンスについてお話しします。
荷主側の規制は「新設」ではなく「立証のハードルが下がった」
実は、白トラ業者に運送を依頼する荷主側の取り締まりは、今年4月以前から法律上は可能でした。ただし、荷主を処罰するには、無許可営業を行う運送業者の犯罪行為に対する幇助罪や共同正犯といった構成を立証する必要があり、そのハードルが非常に高かったのが実情です。
「知らなかった」「運送業者に任せていた」といった主張を崩し、荷主側の認識や関与を捜査機関が立証するのは容易ではありません。この立証の難しさが、これまで荷主側の摘発がほとんど表面化してこなかった大きな理由です。
今年4月に施行された改正貨物自動車運送事業法は、この構図を変えました。無許可業者へ運送を依頼する行為そのものを規制対象として明確化したことで、捜査機関が荷主側の責任を問うための立証のハードルが大きく下がったのです。今回のスピーディーな摘発は、まさにその効果が表れた結果だと見ています。
今後、同様の摘発は続くと考えられる理由
立証のハードルが下がったということは、捜査機関にとって着手しやすい事案が増えたということでもあります。今回の一件を皮切りに、荷主側の摘発は今後も各地で続いていくと考えるのが自然です。
特に、運賃相場よりも極端に安い依頼を受けている荷主や、運送会社の許可の有無を確認せずに取引を続けている荷主は、今後リスクにさらされる可能性が高くなります。「知らなかった」では済まされない時代に入ったと考えるべきでしょう。
運送会社にとってはチャンスでもある
この流れは、運送会社にとって厳しい話ばかりではありません。むしろ、コンプライアンスを守り、適正に許可を取得して運行している会社にとっては、追い風になり得ます。
荷主側も今回のような摘発を目の当たりにすれば、運送委託先の選定に対する意識が確実に変わっていきます。「安ければどこでもいい」ではなく、「きちんと許可を持ち、適正に運行している会社に頼みたい」という考え方が広がっていくはずです。これは、適正原価での取引や、荷主との信頼関係の構築につながる大きなチャンスです。
白トラ規制の強化は、目先だけを見れば厳しい規制強化に映るかもしれません。ですが、長い目で見れば、真面目にコンプライアンスを守ってきた運送会社がきちんと評価され、生き残っていける環境づくりでもあります。
おわりに
2026年問題をはじめとする物流業界を取り巻く環境は、決して楽観できるものではありません。ですが、コンプライアンス意識を持って運行を続けている会社には、これから確実に恩恵が回ってくる局面に入ってきています。
厳しい状況が続きますが、ここはもうひと踏ん張り。適正な運行を続けてきた運送会社の皆さまが正当に評価される時代は、すぐそこまで来ています。
