「これは危ない」と感じる瞬間|運送会社の賃金制度ヒアリングで感じる3つのリスク

「これは危ない」と感じる瞬間|運送会社の賃金制度ヒアリングで感じる3つのリスク

運送会社への賃金制度コンサル、ヒアリングを進めていると「これは危ないな」と感じる瞬間が何度もあります。

経営者の方に悪意があるわけではありません。むしろ「当然そうだと思っていた」という思い込みが、気づかないうちに大きなリスクを生み出しているのです。今回は、ヒアリングで感じる3つのリスクをお伝えします。

リスク① 「歩合給があるから残業代は不要」という思い込み

「うちは歩合給があるから、残業代は払わなくていいんですよね?」

ヒアリングでよく出てくる言葉です。歩合給制度を導入している運送会社は少なくなく、「走った分だけ給料が増える仕組みだから、残業代は含まれている」という認識を持っている経営者が多くいます。

しかし、これは非常に危険な思い込みです。歩合給が残業代として支払っていると考えている会社が負けてしまった、最高裁判決が続いています。歩合給を導入している会社でも、しっかりと残業代を支払う必要があります。

「ずっとこの方法でやってきた」という会社ほど、未払い残業代が積み重なっているケースがあります。早めの見直しが不可欠です。

リスク② 残業代の取り決めが「口約束」だけ

「〇〇手当が残業代ということで、口頭で説明してあります」

特定の手当を残業代とみなす「固定残業代制度」は、要件を満たせば認められる場合があります。ただし、口約束だけでは厳しいのが現実です。

固定残業代が有効とされるためには、就業規則や雇用契約書にしっかりと記載されている必要があります。口頭での説明や慣行だけでは、労働者との間でトラブルが生じたときに会社側を守ることができません。

残業代の問題に限らず、労働条件は「書面で明示する」が鉄則です。口約束は法的には通用しない——このことを、しっかりと認識する必要があります。

リスク③ ドライバー以外の未払い残業代が見落とされている

運送会社のコンサルでは、どうしてもドライバーの賃金制度に注目が集まりがちです。しかし、見落としてはいけないのがドライバー以外の職種の残業代リスクです。

たとえば、こうした職種の方々の労働時間は適切に管理されていますか?

  • 運行管理者
  • 管理職・所長クラス

「管理職だから残業代は払わなくていいんでしょ?」——こう答える経営者が非常に多いのですが、ここにも大きな落とし穴があります。

労働基準法上の「管理監督者」として残業代が不要とされるためには、経営方針への関与・労働時間の自由裁量・相応の処遇など、厳格な要件を満たす必要があります。中小企業で「所長」「課長」という肩書きを持っているだけでは、この要件をクリアできないケースがほとんどです。

ドライバーの賃金制度を整えても、他の職種に未払い残業代が潜んでいたのでは、リスクは解消されません。会社全体を俯瞰したヒアリングが必要です。

まとめ

運送会社の賃金制度ヒアリングで必ず確認する3つのリスクをまとめます。

  • 歩合給を残業代と思い込んでいないか
  • 残業代の取り決めが口約束だけになっていないか
  • ドライバー以外の職種の未払い残業代リスクを見落としていないか

これらのリスクは、経営者の方が「当然そうだと思っていた」という思い込みから生まれるケースがほとんどです。賃金制度の整備は、こうした認識のズレを一つひとつ丁寧に解きほぐすことから始まります。