賃金と労働時間は、切っても切れない関係です。どれだけ丁寧に賃金制度を設計しても、労働時間の管理に問題があれば、残業代の計算は正しくなりません。
運送会社への賃金制度コンサルでは、必ずヒアリングの早い段階で「労働時間の管理方法」を確認します。そこで出てくるのが、この業界特有の3つの落とし穴です。
落とし穴① デジタコ=労働時間管理、という思い込み
「うちはデジタコで管理しています」——ヒアリングでよく聞く言葉です。デジタルタコグラフは確かに便利なツールですが、記録できるのは運転時間だけです。
では、こうした時間はどこに記録されていますか?
- 荷物の積み下ろし(荷役)の時間
- ドライバー教育・点呼の時間
- 洗車・車両点検の時間
これらはすべて労働時間に該当しますが、デジタコでは捉えられません。「デジタコで管理している」と言いながら、実態は労働時間の一部しか把握できていない、というケースが非常に多いのです。
落とし穴② 週休1日なのに「1日8時間超え=残業」という認識
まだまだ週休2日の導入が難しい会社が多い運送業界。週休1日の会社で「1日8時間を超えたら残業」という運用をしているケースをよく見かけます。しかしこれは、法律の仕組みとズレがあります。
時間外労働が発生するのは、「1日8時間超え」だけではありません。「週40時間超え」も残業の起算点になります。週休1日(週6日勤務)の場合、1日8時間以内でも6日×8時間=48時間となり、週40時間を8時間上回ります。この8時間分は、たとえ1日の労働時間が8時間以内であっても、残業代の支払い対象となるのです。
「1日8時間以内だから残業はゼロ」——この認識のズレが、残業代計算に大きな誤りを生む原因になります。
落とし穴③ 営業所ごとにバラバラな管理方法
複数の営業所を持つ会社でよく見られるのが、管理方法が拠点ごとにバラバラというケースです。
- A営業所はデジタコで管理
- B営業所は点呼時間で管理
- C営業所はタイムカードで管理
どの方法が適切かを検討することも大切ですが、まず問題なのは「会社として統一された基準がない」ことです。管理方法がバラバラでは、全社的な労働時間の把握も、賃金制度の統一も、どちらも成り立ちません。
コンサルに入る前に、まず「どの方法で、会社全体として統一するか」を経営トップが決断することが必要です。
まとめ
運送会社の労働時間管理には、業界特有の3つの落とし穴があります。
- デジタコだけでは運転時間しか把握できない
- 週休1日の場合、週40時間超えの残業が見落とされやすい
- 営業所ごとに管理方法が異なり、全社統一ができていない
賃金制度を正しく機能させるためには、まず労働時間の「現実」を正確に把握することが出発点です。ヒアリングでこの3点を丁寧に確認することが、コンサルの質を大きく左右します。
次回は、労働時間の把握ができた後に進む「賃金体系のヒアリング」のポイントをお伝えします。
