「上限時間を長く書くと監督署に目を付けられる」は本当か? 36協定の都市伝説を検証する

「上限時間を長く書くと監督署に目を付けられる」は本当か? 36協定の都市伝説を検証する

「36協定の上限時間、長めに書くと監督署に目を付けられるって聞いたんですが……」

運送会社の経営者の方から、こんな相談を受けることがあります。

結論から言うと、これが正しいかどうか、私にも断言できません。監督署の内部基準は公開されていないからです。

ただ、「短めに書けば安心」というのは、完全な都市伝説だと言い切れます。

翌日に監督官が飛んできた

こんな事例があります。

ある運送会社が、「監督署に目を付けられたくない」と考え、実態よりかなり短い上限時間を36協定に記載して提出しました。

すると——翌日、監督官が訪問してきたのです。

「御社は運送会社ですよね?この上限時間、本当に達成できるのですか?直すなら今ですよ!」

短い時間を書けば監督署が来ない、というのは全くの逆効果でした。実態とかけ離れた数字は、むしろ監督官の目に不自然に映るのかもしれません。

実態に合わない36協定が抱える本当のリスク

「目を付けられたくないから短めに」という発想には、もっと根本的な問題があります。

何かのきっかけで監督署の調査が入ったとき、実際の労働時間が36協定の上限を超えていれば、それは明白な法違反です。

実態に合わない数字を書いていれば、調査のたびに違反リスクを抱え続けることになります。

運送会社にはさらに、もう一つ怖いことがあります。

運送業特有のリスク:相互通報制度

監督署と運輸局の間には「相互通報制度」があります。

監督署の調査で36協定違反を指摘された場合、その情報が運輸局に通報される可能性があります。運輸局の監査は、事業許可にも直結する話です。

運送会社にとって36協定の問題は、労働基準法違反だけにとどまりません。事業そのものの根幹を揺るがすリスクになり得るのです。

36協定は「慎重に、実態に合わせて」作るのが正解

では、36協定の上限時間はどう決めればよいのでしょうか。

基本的な考え方はシンプルです。自社のドライバーの実態を踏まえ、会社と労働者側がしっかり話し合って決める。それだけです。

チェックポイントとして、以下を確認してみてください。

  • 過去1〜2年の実際の時間外労働の実績はどのくらいか
  • 繁忙期や特定の路線で突出して長くなる時期はないか
  • 今後の事業計画や荷主との契約内容と整合しているか

実態に即した数字を丁寧に積み上げることが、結果として会社を守ることに繋がります。

まとめ

「上限時間を長めに書くと監督署に目を付けられる」——この都市伝説を信じて、実態とかけ離れた短い時間を書くことは、大きなリスクを抱えることになります。

運送会社にとって36協定は、2024年問題に直結し、相互通報制度を通じて運輸局監査にも繋がる重要書類です。適当に作るのではなく、専門家のサポートも活用しながら、慎重に、丁寧に作成することをお勧めします。

36協定の作成や見直しでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。