運送会社の賃金規程を整備しようとしたとき、「一般的な賃金規程のひな形でいいだろう」と考えるのは危険です。運送業には運送業ならではの賃金制度の複雑さがあり、それを無視したまま規程を作ると、後から大きなトラブルの原因になることがあります。今回は、実際に運送会社の賃金規程を作る際に気をつけてほしいポイントをお伝えします。
一般社員用とドライバー用は別々の規程にする
まず大前提として、一般社員(事務・営業・整備など)とドライバーを同じ賃金規程で管理しようとするのは無理があります。
なぜかといえば、一般社員の賃金制度とドライバーの賃金制度は、そもそも設計の考え方が根本から異なるからです。一般社員は月給制が中心なのに対して、ドライバーは歩合給・時間外手当・各種運行手当など、複雑な賃金構造を持っていることがほとんどです。
同じ規程に両方を詰め込もうとすると、規程が読みにくくなるだけでなく、いざトラブルになったときに「どちらに適用されるルールか」が曖昧になります。一般社員用とドライバー用は、最初から別々の規程として作ることをおすすめします。
ドライバーの中でも賃金制度は異なる
さらに注意が必要なのは、ドライバーといっても一律ではない、という点です。
地場配送を担当するドライバーと長距離を担当するドライバーでは、労働時間のパターンが大きく違います。地場便は日帰りで残業が比較的少なめになるケースが多い一方、長距離便は泊まりを伴い残業時間が多くなりがちです。この違いを無視して同じ賃金制度にしてしまうと、実態に合わない規程になってしまいます。
このため、ドライバー向けの賃金制度についても、残業が多いドライバーと残業が少ないドライバーとで、それぞれに対応した設計が必要になることが多いのです。
「3パターン程度」に抑えるのが現実的
ここまでの話を整理すると、運送会社では複数の賃金制度が必要になることがわかります。ただし、賃金制度のパターンを増やせば増やすほど、管理が複雑になるというデメリットもあります。
実務的には、次の3つ程度に収めるのが現実的なバランスだと思います。
- 一般社員用の賃金制度(1つ)
- 残業が多いドライバー向けの賃金制度(1つ)
- 残業が少ないドライバー向けの賃金制度(1つ)
これらを「一般社員用賃金規程」と「ドライバー用賃金規程」の2本立てで文書化するイメージです。ドライバー用の規程の中に、残業の多い・少ないそれぞれのパターンを盛り込む形にすると、管理のしやすさと実態への対応力のバランスが取れます。
まとめ
運送会社の賃金規程を整備するときは、「一般社員」と「ドライバー」を最初から分けて考えることが基本です。さらにドライバーの中でも働き方の違いに対応した制度設計が必要です。ただし、パターンを増やしすぎると管理が追いつかなくなるため、3パターン程度を目安に、シンプルで運用しやすい体制を目指しましょう。
賃金規程の整備は、一度作ったら終わりではなく、その後の運用が大切です。複雑になりすぎない設計を心がけることが、長く使える賃金制度への近道です。
