中東情勢の影響で、軽油の価格高騰だけでなく、燃料そのものが手に入らなくなるリスクが、運送業界で現実のものとなりつつあります。
「まさかそんなことには……」と思う方もいるかもしれません。しかし現在、複数の運送会社が取引先に対して、こんな内容の文書を正式に送り始めています。
- 燃料が確保できない場合、配送を一時停止する可能性がある
- エンジンオイルや尿素水の不足で、稼働できない車両が出るかもしれない
- 状況によっては運賃の改定(燃料サーチャージの導入)をお願いする場合がある
「強気だな」と感じる方もいるかもしれません。でもこれは、経営判断として正しい行動だと私は思います。
「黙って耐える」ことのリスク
何も言わずに耐え続けて、ある日突然「配送できません」となったとき——取引先は怒ります。「なぜ事前に言わなかったのか」と。最悪、損害賠償の話になることもあります。
これまで多くの運送会社は、コスト上昇を「自助努力」で吸収し、取引先には何も言わずに耐えてきました。しかしその結果、取引先には「運送会社は何とかしてくれる」という誤った前提が根付いてしまっています。
事前に伝えておくことは、取引先への誠意でもあり、自社を守ることでもあります。
トラック新法・下請け法という追い風
2024年に施行されたトラック新法や、下請け法の適用範囲拡大により、運賃交渉や契約条件の見直しを求めやすい環境が整いつつあります。「言い出せない」という空気は、少しずつ変わってきています。
もちろん、いきなり強気な文書を送りつけることが全ての会社に合うわけではありません。取引先との関係性や自社の規模によって、アプローチは変わってくるでしょう。
ただ、今回の事例で押さえておきたいポイントが一つあります。それは、「自助努力をしてきた事実」を明記したうえで「それでも限界」と伝えている点です。いきなり値上げを要求するのではなく、「できる限りのことはした。しかし状況が変わった」という文脈を丁寧に作っているのです。
まず「伝える準備」から始めてみませんか
大手の事例を参考にしながら、自社に合った言い方・伝え方を考えておくことが、今この時期には重要だと思います。
「もし燃料が確保できなくなったらどう伝えるか」を、今のうちに想定しておく。それだけでも、いざというときの対応がまったく変わってきます。
現場を守るために、言葉を準備する。それが今、経営者に求められていることではないでしょうか。
株式会社アイエヌライングループの事例
