一言で「歩合給」と言っても、その中身は様々です。運送業界のセミナーや相談の場で目にすることが多いのは、売上に応じて支払われる「売上歩合」と、このコースを1本走ればいくら、という「ルート別単価設定」ではないでしょうか。
一方で、意外と耳にしないのが、走行距離に応じて金額が増えていく「距離歩合」です。同じ歩合給の一種でありながら、なぜトラック運送業界では、この距離歩合があまり浸透していないのでしょうか。
距離歩合が多いのは、実はバス業界
距離に応じた歩合給が多く採用されているのは、実はバス業界です。理由はとてもシンプルで、バスは走行するコースがあらかじめ決まっているからです。
決まったルートを、決まった距離だけ走る。だからこそ、走行距離と労働の実態がぴったり一致し、距離歩合という仕組みが違和感なく機能するのです。
トラック運送業界では、事情が異なる
一方、トラック運送業界はどうでしょうか。ルートについては、ある程度会社から指示が出ることが多いですが、バスのように毎回まったく同じコースを走るとは限りません。日々、様々な現場や配送先に応じて、ルートが変わることも珍しくないでしょう。
たとえば、不慣れな新人ドライバーが道に迷ってしまえば、その分走行距離は伸びてしまいます。距離歩合であれば、道に迷っただけで歩合給が増えることになってしまうのです。
さらに言えば、あえて遠回りをして帰ってきても、走行距離が伸びれば、それだけ歩合給が上がってしまいます。働き方改革や2024年問題への対応で、労働時間や拘束時間の管理がこれまで以上に厳しく見られる時代に、わざわざ遠回りをされてしまっては、会社としては困ってしまいます。
だからこそ、距離歩合は浸透しない
こうした理由から、トラック運送業界には距離歩合という仕組みが、なかなか浸透しないのではないかと感じています。
売上歩合やルート別単価設定であれば、道に迷おうが遠回りをしようが、支払われる歩合給は基本的に変わりません。労働時間管理の観点からも、こちらの方が運送会社にとって扱いやすい制度だと言えそうです。
歩合給の設計は、単に「頑張った分を給料に反映する」というだけでなく、こうした業務特性や管理のしやすさまで含めて選ぶことが大切なのだと思います。
