運送会社でもDXはできる!

運送会社でもDXはできる!

総務省「働き方DX実践Tips集」から学ぶ実践のポイント

「DXは大企業がやるもの」「うちは運送会社だから関係ない」——そう思っていませんか?

しかし、そのような思い込みをやさしく、しかし確実に覆してくれる資料が今年3月に発行されました。総務省が公表した「働き方DX実践Tips集(運輸業編)」です。

今回はこの資料をもとに、運送会社が今すぐ取り組める働き方DXのポイントを整理してご紹介します。

そもそも「働き方DX」とは何か

この資料では、働き方DXを「デジタル技術で実現する、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方への変革」と定義しています。

重要なのは、DXはあくまで「手段」であるということです。目的はドライバー不足の解消、業務効率化、長時間労働の軽減、そして従業員満足度の向上です。ICTツールを導入すること自体がゴールではなく、自社が抱える経営課題を解決するための道具として活用することが求められています。

また、求職者の意識変化も見逃せません。調査によれば、就職・転職希望者の約7〜8割がリモートワーク制度のある企業を選ぶ傾向にあるといいます。採用難が続く運輸業界において、「選ばれる職場」になるためにも、働き方の柔軟化は急務といえます。

「現場があるからDXは無理」は思い込みだった

運輸業でDXというと、「配達や仕分けなど現場作業が中心だから、リモートワークなんて無理」というイメージを持たれがちです。しかし、現場作業が必要な業務と、リモートや自動化で対応できる業務を切り分けることで、DXの選択肢は大きく広がります。

たとえば、以下のような業務はすでに多くの企業でデジタル化が進んでいます。

  • 配送ルートのAI最適化(移動時間・燃費の削減)
  • 勤怠管理システムのオンライン化(リアルタイムの労働時間把握)
  • 乗務員の健康状態確認のリモート化(不要な出勤の削減)
  • ドライブレコーダー映像の解析(危険挙動の抑制・事故率改善)
  • 帳票・日報のデジタル化(手入力業務の大幅削減)

全日本トラック協会・常務理事の山﨑寛氏も「デジタル化は今後の経営改善のために絶対に必要な取組」と明言しています。業務全体を一気に変える必要はなく、まずは自社の課題に直結する身近な業務から着手することが、着実な前進につながります。

実践企業に学ぶ:小さな会社でもここまでできる

資料には2社の実践事例が紹介されています。いずれも従業員数が20〜32名の中小企業です。

◆ 菱木運送株式会社(千葉県・32名)

改善基準告示への確実な法令遵守を目的に、デジタルタコグラフと連携したスマートフォンアプリ「乗務員時計」を自社開発(8年以上かけて改良)。カウントダウン式で残余拘束時間を表示し、ドライバー自身が休憩・終業の目安をリアルタイムで確認できます。その結果、事故発生率が減少し、自動車保険の割引率は70%に到達。また、待機時間をデータ化することで荷主への交渉材料としても活用しています。

◆ 南国運送有限会社(高知県・20名)

長距離輸送が多い事業構造の中、労働時間規制への対応を経営の最重要課題と位置づけ、配車・運行管理・勤怠管理・請求業務を統合したクラウドシステム(TUMIX)を導入。その結果、待機・積み下ろし時間を約193時間(24.7%)削減、拘束時間を約296時間(6.7%)削減。さらに勤務時間当たりの売上が前年比106%となり、労働時間の短縮と生産性向上を同時に実現しています。

進め方のポイント:5つのステップ

資料では、働き方DXを次の5ステップで進めることを推奨しています。

  • 経営トップが目的・メリットを明確にして従業員へ周知する
  • 現場・労務・ICT部門を横断した推進体制を構築する
  • 実践範囲と労務・セキュリティのルールを決める
  • 業界特性に合ったICTツールを選定・導入する
  • まず一部門でトライアル導入し、効果を測りながら拡大する

大切なのは「全社一斉に始めなくていい」ということです。一部門・一業務から試験的に導入し、課題と効果を確認しながら広げていくアプローチが、中小企業には現実的です。

活用できる補助金・助成金も整備されています

働き方DXの推進にあたっては、国の支援メニューも積極的に活用しましょう。主なものとして以下があります(※申請時は最新情報をご確認ください)。

  • 厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」
  • 厚生労働省「業務改善助成金」
  • 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金)

まとめ

「規模が小さいから」「現場があるから」——そういった理由でDXをためらっている運送会社こそ、今が一番の変わり時かもしれません。

実践企業の事例が示すように、重要なのは大規模な投資よりも、経営者の明確な意思決定と、現場に即した小さな一歩です。

「何から手をつければいいかわからない」「自社に合った進め方を相談したい」という方は、ぜひお気軽にご連絡ください。労務管理の観点からも、DX推進のサポートをさせていただきます。

「働き方DX実践Tips集(運輸業編)」

https://www.soumu.go.jp/main_content/001058177.pdf