運送会社の経営者や管理職の方から、こんな連絡が入ることがあります。
「荷主さんから、うちのドライバーを出入り禁止にしてほしいと言われてしまいました……」
荷主さんは大切なお客様です。そのお客様からこう言われたら、経営者としては気が気でないでしょう。思わず、そのドライバーを呼びつけて怒鳴ってしまう——そんなケースが、実際に少なくありません。
でも、そこで少しだけ立ち止まって考えてほしいのです。
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社内での評判と、外での姿は違うことがある
ドライバーという仕事の特性上、一度外に出てしまうと、その仕事ぶりは会社からなかなか見えません。社内では無口で不愛想、同僚からの評判もあまり良くない——そんなドライバーが、実は取引先ではきちんと挨拶をして、「あの人は感じが良い」と好評だった、というケースは、実際によくあることです。
逆もまたしかりで、社内での評価が高いからといって、外でも同じとは限りません。見えないところでの姿が、その人の本当の姿だったりするものです。
だからこそ、「出入り禁止」の通告を受けたとき、会社はまず「何があったのか」をしっかり確認することが大切です。
荷主さんの担当者も、良い人ばかりではない
もちろん、ドライバーが本当に相手を怒らせるような言動をしてしまったケースもあります。それは真摯に受け止めなければなりません。
ただ——荷主さんの担当者も、必ずしも良い方ばかりとは限りません。ドライバーを下に見て、高圧的な態度で接してくる方がいるのも、残念ながら現実です。毎回きつい言い方をされ、理不尽な要求をされ、それでも「お客様だから」とじっと耐えてきたドライバーが、ある日ついに限界を迎えてしまった——そういうケースが、出入り禁止トラブルの背景に隠れていることがあります。
これは、まさにカスタマーハラスメント(カスハラ)の問題でもあります。2024年には東京都がカスハラ防止条例を制定するなど、社会的な関心も高まっています。取引先であっても、従業員への不当な扱いは許されない——そういう時代になってきているのです。
会社がまずやるべきこと——ドライバーの話を聞く
出入り禁止の通告を受けたとき、会社としてまずやるべきことは何でしょうか?それは、ドライバー本人からきちんと話を聞くことです。当たり前のことのように聞こえますが、荷主への対応に追われて、これができていない会社が少なくありません。
何があったのか。相手にどんな対応をされていたのか。これまで誰かに相談したことはあったのか。こうした事実を丁寧に確認することで、トラブルの本当の原因が見えてきます。
調査の結果、やむを得ずそのドライバーを荷主の担当から外すことになったとしても、それで終わりにしてはいけません。事情によっては、会社としてしっかりフォローしてあげることが必要です。「あなたのことをきちんと見ていますよ」というメッセージを、言葉と行動で伝えることが、従業員との信頼関係を守ることにつながります。
「話を聞いてもらえなかった」が、労務トラブルの火種になる
実際に、こうした場面での会社の対応がきっかけで、労務トラブルに発展するケースがあります。荷主からの一方的な通告だけを信じて、ドライバーを頭ごなしに叱責し、懲戒処分を下す——これは、処分の有効性の面でも問題が出てくる可能性があります。
懲戒処分を行うには、事実関係の調査と本人への弁明の機会の付与が必要です。それを怠ったまま処分を下すと、後から「不当処分だ」と争われるリスクがあります。
また、もしドライバーが「カスハラ被害を訴えても会社が対応してくれなかった」と感じていれば、安全配慮義務違反を問われる可能性も出てきます。会社はお客様だけでなく、従業員も守る義務があるのです。
まとめ——お客様も大事、でも従業員も同じくらい大事
「あのドライバーを出入り禁止に」という通告を受けたとき、すぐに感情的に動かないでください。
荷主さんとの関係は大切です。でも、毎日頑張ってくれているドライバーも同じくらい大切な存在です。外での仕事ぶりは見えにくい分、会社が信頼して向き合ってあげることが、何より重要です。
まず話を聞く。事実を調査する。そのうえで、適切に対応する。この順番を守ることが、従業員との信頼関係を守り、会社を守ることにもつながります。
