物流系の業界紙である物流ニッポンが、物流企業を対象に「2026年度新卒採用」に関する調査を実施し、その結果が公開されました。採用に有効だった求人手段のランキングや、採用状況の傾向など、業界の今が見えてくる内容です。今回はそのなかから、特に目を引いたデータをご紹介します。
有効だった求人手段、上位は「納得」の顔ぶれ
まずは、物流企業が「採用に有効だった」と回答した求人手段のランキングから見ていきましょう。
1位は就職情報サイトで86%。2位が合同企業説明会で45%。3位は学校の就職課で38%。4位が自社HPで29%。5位は社員の紹介で15%という結果でした。
このランキングを見て、多くの方が「まぁ、そうだよね」と感じるのではないでしょうか。就職情報サイトが圧倒的なトップというのは、就活生の行動パターンを考えれば自然な結果です。就活生の多くがまず就職情報サイトに登録し、企業を検索・比較するところからスタートするわけですから、86%という数字にも違和感はありません。
合同企業説明会や学校の就職課は、いわゆる「昔ながら」の手法です。しかし今もなお4割前後の企業が有効だと感じているという事実は、これらの手法がデジタル化の波の中でも一定の存在感を保っていることを示しています。対面でのコミュニケーションや、学校という信頼性のある窓口は、依然として学生と企業をつなぐ役割を果たしているのかもしれません。
そして、ここからが「えっ?」という数字
ランキングの上位を眺めていると、ひとつ気になる存在がありました。最近、採用に関する話題でよく耳にするキーワード──「SNS」や「動画サイト」です。
TikTokやYouTubeで職場の雰囲気を発信したり、Instagramで社員の日常をのぞかせたり。採用コンサルタントや人事担当者向けのセミナーでも、「Z世代にはSNSや動画コンテンツが刺さる」「採用ブランディングにはSNSが不可欠」といった声をよく聞くようになりました。
では、今回の調査でSNSや動画サイトを「有効だった」と回答した物流企業は何割だったのでしょうか。
答えは──たったの4.5%。
正直、この数字には驚きました。「思ったより少ないな」というレベルではなく、「え、そんなに低いの?」という感覚です。採用の現場でSNS活用が盛んに語られているだけに、この乖離はなかなかインパクトがあります。
なぜSNSは「効いていない」のか?ふたつの見方
この4.5%という数字をどう読み解くか。大きく分けて、ふたつの視点が考えられます。
ひとつ目は、就活生側の行動パターンの問題です。若い世代がSNSを日常的に使っているのは間違いありません。しかし「物流会社の採用情報をSNSや動画で探す」という行動が、就活のプロセスの中にまだ組み込まれていないのかもしれません。就活生にとってのSNSは、エンタメや友人との交流の場であって、企業を探す場という認識がまだ薄い可能性があります。
ふたつ目は、企業側の発信内容や見せ方の問題です。SNSアカウントを開設して情報を発信してはいるものの、就活生の心に届くコンテンツになっていないケースも十分考えられます。単に「会社の紹介」や「業務内容の説明」を並べるだけでは、スクロールの指は止まらないでしょう。共感を呼ぶストーリーや、リアルな職場の空気感が伝わる工夫がなければ、発信していても「有効」とは感じにくいかもしれません。
もちろん、この両方が絡み合っている可能性もあります。就活生のSNS活用習慣がまだ追いついていない中で、企業側の発信も試行錯誤の段階にある──そういう過渡期なのかもしれません。
「効果がない」と切り捨てる前に
一方で、4.5%という数字をそのまま「SNS採用は効果がない」と読むのも、少し早計かもしれません。そもそもSNSや動画を積極的に採用に活用している物流企業自体がまだ少数派である可能性もありますし、業種や企業規模によっても結果は変わってくるでしょう。
また、採用への直接的な貢献は見えにくくても、認知度向上や採用ブランディングという観点では、中長期的に効果が出るケースもあります。「応募につながった手段」として計上されにくいだけで、就活生が企業を知るきっかけになっているということは十分あり得ます。
今回の調査データは、あくまでも運送会社側が「有効だったと感じた」という主観的な評価。SNSの活用が採用にどう貢献するかは、今後さらに研究と実践が積み重なっていく分野ではないでしょうか。
気になるデータは、問いを生む
採用の専門家でもない私がこのデータを見て感じたのは、「正解はまだわからない」という率直な感想です。ただ、こういった調査が公開されることで、採用に携わる方々が改めて自社の取り組みを振り返るきっかけになるとしたら、それだけでも意味があるのかなと思います。
SNSは本当に採用に効くのか? 効くとしたら、どんな使い方が正解なのか? 就活生はSNSで企業を探しているのか、いないのか?
物流業界の採用をめぐる、ちょっと興味深い問いが浮かんだ調査結果でした。
