先日、こんなニュースが飛び込んできました。
自動運転トラックの開発を手がけるT2が、関東〜関西間の約500kmの高速道路を、ドライバーがハンドルに一切触れることなく完走することに成功した、と。レベル2の自動運転による長距離完走としては、国内初の快挙です。
技術の進歩って、本当にすごいな…と純粋に感動しつつ、運送業界を長年見てきた社労士として、少し違う角度からこのニュースを眺めてしまうのが職業病というものです…
長距離輸送の現場で、今何が起きているか
実はここ数年、長距離輸送から撤退する運送会社が増えています。
2024年問題による時間外労働の規制強化、燃料費や高速代の高騰、そして慢性的なドライバー不足。長距離輸送は利益が出にくい構造になりつつあり、「採算が取れないなら、もうやめよう」という判断をする会社が増えているのが実情です。
そこに追い打ちをかけるように、ドライバーの気質も大きく変わってきています。
ひと昔前は、「長距離をガンガン走って、がっつり稼いでなんぼ!」という、私が勝手に「職人ドライバー」と呼んでいるタイプが主流でした。走行距離=誇り、みたいな気概を持った方々ですね。
ところが最近は、「給料はそこそこでいいから、毎日家に帰りたい」という「サラリーマンドライバー」が増えています。仕事はきっちりこなすけれど、プライベートや家族との時間も大切にしたい。それがいまの若い世代を中心としたドライバーの本音です。
自動運転は「救世主」か?「脅威」か?
そう考えると、今回の500km手放し完走のニュースは、長距離輸送業界にとっての「光」に見えます。ドライバー不足で回らなくなりつつある長距離幹線輸送を、自動運転が補ってくれるかもしれない、という期待です。
一方で、「ドライバーの仕事が奪われる」という不安の声も当然出てきます。特に、長距離をメインに稼いできた職人ドライバーにとっては、自分の仕事の価値が揺らぐような感覚を覚えるかもしれません。
ただ、冷静に見ると、自動運転が実用レベルで社会実装されるまでにはまだ相当な時間がかかります。今回の成果はあくまでレベル2、つまりドライバーが乗車した状態での話。完全無人のレベル4実現は、まだ先の話でしょうし、全国規模での普及となればさらに先の話です。
「すぐにドライバーが不要になる」という話ではないのですが、方向性として業界が変わっていくことは確かです。
「ドライバー」が、普通の職業になる日
ここからが、私が一番お伝えしたい視点です。
自動運転が進化し、長距離の過酷な夜間走行をテクノロジーが担うようになると、ドライバーという仕事は少しずつ「特別な仕事」から「普通の職業」へと変わっていく可能性があります。
これまで運送会社が採用で戦ってきた相手は、主に「隣の運送会社」でした。同業他社と給与や条件を比べながら、いかに自社を選んでもらうか、という戦いです。
でも、ドライバーが「普通の職業」になると、話が変わります。競合はもはや隣の運送会社だけではありません。工場、倉庫、配送センター、小売り、サービス業…あらゆる業種が人材獲得のライバルになる。確かに採用競争は激しくなります。
でも、見方を変えれば、これは大きなチャンスでもあります。
これまで「体力的にきつそう」「ずっと家に帰れない」というイメージで運送業界を敬遠していた層が、これからは「ちょっと興味あるかも」と思い始めるかもしれない。毎日帰宅できる近距離配送や、自動運転技術を扱うオペレーター的な役割も増えていけば、これまでとはまったく違う人材が集まってくる可能性があります。
だからこそ、今から「ステキな会社」を作っておく
自動運転が普及する未来では、「どんな人にとっても働きやすい運送会社」が選ばれる時代になります。職人ドライバーもサラリーマンドライバーも、そして今まで運送業界と縁がなかった人たちも、「ここで働きたい」と思ってもらえる会社。
適正な賃金、しっかりしたコンプライアンス、働きやすい環境。これは今すぐ取り組める話であり、数年後の採用競争を勝ち抜くための、今できる最大の投資でもあります。
自動運転500km完走のニュースを見て、私がそんなことを考えていたのは…やっぱり職業病ですかね…
でも、変化の波はもうそこまで来ています。ぜひ、この機会に自社の「人材戦略」を一度見直してみてください!
